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その時だった。お屋敷の扉の向こう側から、扉をたたく音と男性の声がする。私は、慌てて使用人を呼ぼうとして後ろを振り返った。
けれど、このまま使用人を頼っても良いのか迷っていた。
外に出てみたい。外の人と話してみたい。恐怖心よりも一歩前に進んでいく勇気を優先させたい。
私は、ドアノブに手をかけた。そのドアノブを強く握って捻る。この簡単な動作が私には、新鮮に思えた。
扉を開けると見知らぬ男性が私にお辞儀して父の名前をだした。
客人かと思ったが、服装が汚れている。お父様を訪ねてくる人達は、いつも正装をして来ているのを私は、遠目から見ていたことがあった。
そのことを考えると目の前に立っている彼を私は、本で読んだ盗賊だと勝手に決めつけた。
驚きと恐怖が入り混じって私は、その場から逃げようとしたが、その場でつまづきしりもちをついた。
そんな私に彼は、手を差し伸べて大丈夫ですか?と声をかけてくれたが、それどころではなかった。
私は、そのまま彼の言葉を無視して後ずさりをした。
彼は、私の行動に戸惑っている。こんな人に醜態を晒すなんて。そう思いつつ私は、必死になって使用人達の名前を叫んだ。惨めな姿を使用人に晒すのは、嫌なことだったが、死ぬのはもっと嫌だった。
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