第1章

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前回、兵藤の家に向かった時は嫌々だった。面倒くせーなと思ってダラダラと歩いた道のりを今は意気揚々と歩いている。 そして、兵藤は前回の俺のように嫌そうな顔をしてちんたらと歩く。 「おい、おせーぞ。」 サッサと歩けと命令すると、ツンと横を向いて聞こえないふりをする。そんな様子さえも楽しく感じるのは、俺がSだからではなくあいつのペースを初めて崩せた喜びの為だ。 いつもいつも兵藤のペースに巻き込まれ、思い通りにされていたのだから今回は俺のペースでいかせてもらう。鼻歌を歌わんばかりの機嫌の良さに兵藤はチッと舌打ちをした。 「何だよ?」 わざと、兵藤の肩に手を伸ばし引き寄せて耳元に囁く俺達を見ている奴がいたらきっと俺が兵藤をカツアゲしていると思うだろう。 「別に…」 兵藤は乱暴に俺の手を撥ね退けて歩調を早めた。
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