第1章

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第六話 あの日、俺の隣でグーグー寝倒した兵藤は朝、俺よりも早く目覚めて俺を叩き起こした挙句、朝風呂に入って母屋で飯を食って颯爽と帰って行った。 大人の前では礼儀正しく優等生面の兵藤におかんはしきりに“兵藤君って素敵ね”を連発し“またいつでも遊びに来てね”とニコニコ顔で見送った。 「マジで納得いかねえ」 見送りに駅まで付いて行った俺に礼の一つも言わずにツンケンしたまま帰って行った兵藤は、昨夜の醜態について一切覚えていないのか一言も口にしなかった。 だが、覚えていないなら尚更、俺のトランクスとTシャツを着て寝ていた事に何か言及してくるはずだ。だから、アイツは何かしら覚えているに違いない。 でも、俺がそれを問い質す間もなく兵藤はサッサと帰ってしまった。
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