47人が本棚に入れています
本棚に追加
支離滅裂な言い訳をして苦しい言い逃れをした俺を兵藤がジッと見つめる。その視線が物言いたげで気まずい。
「そうか。」
でも、兵藤はそれ以上俺に問いかける事はしなかった。ゆっくりと立ち上がると部屋をノブを回す。
「もう用はないんだろ？」
そして、また表情のない顔で俺を促した。
「あ、ああ。」
階段を下りる兵藤の背中を見ながら考える。一体俺はどうしたかったんだろう。
兵藤が俺に迷惑を掛けた事を謝らないからこちらもムキになって嫌がる事を強いたが、この間の中途半端な触れ合いについては蒸し返す必要はなかった筈だ。どちらからも話題にしなければそれでなかった事になった。
でも、結局俺はなかった事にしたくはなかったのだろうか？
混乱する思考のまま、俺は兵藤の家を後にした。
最初のコメントを投稿しよう！