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「問題はこいつがどこのデータベースへのアクセスカードなのかだ」  ジョージの手には薄いクリスタルのカードがあった。てのひらに楽に隠れてしまうような薄片は、虹色にプールサイドの明かりを反射していた。  ジョージとタツオは夜のデッキチェアに寝そべっていた。自分たちが泊まっている部屋では、情報保全部の盗聴が心配だった。 サイドテーブルには情報端末が置いてある。ふたり分の端末は同期され、同じ音楽を流していた。夏の夜にふさわしい気だるいリズムのボサノバだ。 ここは野外なので盗聴は困難だろうが、一応警戒し、ノイズ代わりに流しておく。高感度マイクと集音機をつけたライフル銃のような形をした志向性の遠距離盗聴器も存在する。用心に越したことはないだろう。
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