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そんな事とは露知らず、臣下達は姫の命を狙う賊たる俺から姫を護らんと息を巻いている。幸運な事にイケメンは茶髪茶目。こちらは疑う余地が無い。
賊が一人と決めつけている辺りには苦言を呈さざるを得ないが。
「姫、彼奴は危険ですぞ。排除せねばなりますまい」
「しかし、ミハイル」
「姫」
姫はミハイルに負け、苦渋の決断とばかりに眉根を寄せた顔を俯かせ、爪が食い込むほど拳を強く握り締める。
これを肯定と受け取って、臣下達が一斉に魔法を発動させた。一方魔力過多にまで陥っていた俺は抵抗という抵抗も出来ず、とうとう情斬まで手放す羽目になる。
「セ、ラ…姫……」
響きすらも懐かしい名を呼んで、俺は臣下達の攻撃を一身に受け止め激痛と共に再び闇に攫われて行った。
イケメンは崩れゆく俺を、ただただその瞳に映すばかり。
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