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―――
「えー！ 七瀬（ななせ）さん、店長と別れちゃったんですか？」
「……し、静かに」
バイトのお昼休み。
首からＩＤカードをぶら下げると、七瀬さんはアボカドとスモークサーモンのサンドを頬張る私の口に一本の指を立てる。
「あ、ごめんなさい」
自分の配慮の薄さを反省すと、口を押さえて素直にそう謝った。
「もう、恋咲ちゃんったら声が大きいんだから」
笑うとくっきりえくぼが出来るこの人は、５つ年上でバイト先の先輩の七瀬理子（ななせりこ）さん。
「どうして別れちゃったんですか？」
「うーん。なんでだろう」
年下の私からそんな質問をされても、嫌な顔ひとつせずに笑ってそう返してくれる七瀬さん。
「私のことより、恋咲ちゃんは？ 仲直り出来たの？」
自分の話よりも相手の話を優先する。
この気遣いが大人の女性って感じがして、私が一番七瀬さんから見習いたいところだ。
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