cafe 恋 -Vol.1

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* 雨に好かれる人はいるけど、雨に嫌われる人ってそんないない。 今日は週1のデートの日だから、こんな日だけは雨に好かれない私にでもザァっと土砂降りみたいな雨が降って欲しいのに。 「大悟(だいご)、早くしないと」 路肩の雪もすっかり融けた5月中旬の日曜日の朝。 エプロンの結び目を解(ほど)きながら自分の彼氏である笹原大悟(ささはらだいご)に向かって急かしたようにそう言うと、玉子焼きとウインナーの間に小さく切ったブロッコリーを飾った。 「恋咲(ひな)、バットとグローブどこ置いたっけ?」 「えー! 昨日玄関に置いてなかったぁ?」 ユニフォームに身を包み呑気に頭を掻いた大悟の横顔には、既に大人としての風貌が漂っている。 それが置いてけぼりにされたみたいで少し寂しかった私は、ちょっとだけ口を膨らませながらトートバックの中に作りたてのお弁当を詰め込んだ。
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