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―――
「おーもーたぁーいー」
おにぎりとおかずが入った二段重ねの重箱に、お茶の入った水筒。
黄色いトートバックを左肩にかけた私は、先を歩く大悟に向かって拗ねた声でそう合図した。
「貸せよ」
長いバットを肩に置きながら、長い足を進ませ来(き)た道を戻ってくる大悟。
その濃紺のユニフォームの背中には、28と書かれた背番号が磁石を合わせた時のようにピッタリと貼りついていた。
「うーん」
河川敷の隣に敷かれた灰色のアスファルト。
すっかり身軽になった体を後ろに伸ばすと、足を止めて大きく背伸びをした。
形が悪い綿あめのような入道雲と、その下に広大に広がる大海原。
潮風が髪に触れるこの道南の町で、私達は伸び伸びと暮らしている。
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