cafe 恋 -Vol.1

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「あれだけ着といて、それも使うのか?」 「こんなの普通だよ。大悟が暑がりなだけでしょ?」 本州から津軽海峡を挟んだ位置にあるここ道南の夏は意外と短い。 電線にまとわりつくくらいの大雪が降り終わると、草木は緑色に変わり季節は春へと移行する。 それに合わせて自分の服も半袖に変えたと思えば、またすぐにタンスの奥から長袖を引っ張り出さないといけない。 夏が近づいたこの季節でも、朝と夜は特に酷く冷え込むことがあって。 真っ白なレースのブラウスの中には厚手のインナーを着こんだくせに。 オシャレを意識しすぎて見栄を張ってそこにショートパンツなんかを合わせた日には、こうして膝掛けを持ち歩かないと鳥肌がたってしまうのだ。 「やぁっと着いたぁ」 「やっとって、まだ15分しか歩いてねぇじゃん」 細かい土が舞うグランドの端にある真四角な朝礼台。 その上にグローブを置くと、大悟はそう言いながら呆れたように私に背中を向けた。
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