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「おそいよぉ、だいちゃん!」
カンカンカンと金属がぶつかる音が聞こえると、膝のあたりを茶色く染めた勇太君が私の横から大悟の背中めがけてビューと走り出した。
「勇太、ノックするか」
「うん」
大悟の到着をひとり首を長くして待っていたのか、試合前の練習に誘われた勇太君のその顔には満面の笑顔が浮かんでいた。
「あーあ、やっぱ来なきゃよかったなぁ」
グランドの隅の芝生の上。
小さい頃は体育の時間になると、こんな大きな円の中を何周走らされるんだろうとか思ったもんなのに。
こうして大人になるとその面積の狭さに、どれだけ自分が運動嫌いな子供だったかって思い知らされることになる。
「大悟の運動バカ」
週末しか遊べないのに、最近はいつもこればっかり。
野球に関して興味のきの字もない私は、そう言いながらごろんとその場に転がると太陽に手を翳(かざ)し海よりも広いこの空を仰いだ。
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