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それは、関節が勢いよく外れる音。
それは、筋繊維の切れゆく音。
それは、引き伸ばされた皮が千切れ、体から解き放たれる音。
そして、何か粘度が高く、質量の重い水分を含む物体が落ちた。
一連の音は、男の腕を無造作にちぎって投げた音だ。
猛獣を目の前にしたかのような緊張感と共に、飛翔する腕が失速を始め地面へと落下した。
腕がなくなってしまった男は、自らの身に何が起きたか理解できず空を舞う自分の腕を眺める。
いや、この場合見つめているか。
まわりを取り囲んでいる人間も、この異常な光景に見入って身動きが取れないでいるようだ。
「ぐぎゃあぁ。えああっ、あがっがが。ひぃぃぃいぃぃいいー…」
腕を失った男は血の吹き出す自分肩を見て、腕が無くなった事をようやく理解。搾り出すように悲鳴をあげた。
飛んでいった腕の跡は、蛇口を捻ったが如く血を放射状に噴出させる。
その後、男は冷たいアスファルトの上を転がった。
転がりまわる様を、冷笑を浮かべ見つめるのはボロボロの黒い学生服を着た若い男。
「うわぁあぁ、ぎぃゃあああ」
「ば……化け物……」
「ひ…………」
周りにいた3人も、ようやく脳が命の危険を感じとりバラバラな方向へ逃げ始めた。
しかし、ボロボロ男は逃がさない。
左に逃げた男に一足飛びで近づき、頭付近に右手を持って行く。
次の瞬間、男の頭がけたたましい音をたてながら壁にめり込む。
「ははっ、頭蓋骨って意外に硬いんだなぁ。ぐしゃっ、となると思ったのに」
ボロボロ男は呟きながら、クレーターのできている壁に目をやった。
めり込んだそれを引き抜く。
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