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「うーん、ヒビすらはいってないとはね……」
頭皮を剥ぎ取り、中から覗く骨に視線を向ける。
満足げに頷いた後、右へと逃げた男までの距離を、たった1回のジャンプだけで詰めた。
その距離は400m。着地の衝撃でアスファルトに蜘蛛の巣状の亀裂が走った。
「ぎゃぁ……」
蚊の鳴くような悲鳴。
男は自らの生命の灯火が消えかかっている事を感じ取るや、方向転換を行う。
そこへ、ボロボロ男の右足が男の脇腹へ衝突する。
蹴られた男は驚いていた。
右が地面。左が空。理解不能。
喉の奥から這い出てくる生暖かい液体。
口から滴る赤い滴。
先ほど、衝撃の走った腹部を確認する。
そこには可哀想な程、歪になってしまった自らの腹があった。
心臓が凄まじい速度で動き始め、それと共に腹部が痛み、苦痛の表情と脂汗を浮かべる。
男は、誰かが後ろにいるのを感じていた。
やめてくれ。助けてくれ。殺さないでくれ。言いたいことは沢山ある。
しかし喋ろうとすると、口から赤い液体が滴る。声が出ない。息すらも出来ていない事に気づく。
ボロボロの男は90度に折れ曲がったそれを見て、指をさし笑う。
「あははは、なにそれ。はははっ」
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