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『お休みのところ、すみません。ラ・プリエールの件でクライアントから納期の変更があって、1週間前倒しになるらしくって…稲森さん、大丈夫かなと思って…』 その案件なら夏休みをもらうので、随分と先行して進めていた。 「大丈夫。みんなのおかげで帰ったらメチャクチャはかどりそうだし、間に合うよ」 『ホントですか?じゃあ、クライアントに連絡させてもらいますね』 「うん、お願いね」 仕事の話で一段落すると、滝川さんが声のトーンを変えて言う。 『今…市原さんと一緒ですか?』 「うん」 『…ラブラブですか?』 「ラ…!?」 思わず市原さんの立ち位置を確認する。 答えに困る私に受話器の向こうが笑い出す。 『…わかりました』 「…わかったって…何が?」 『いえ、こっちの話。じゃあ…大変、お邪魔しましたー』 電話を切ると、私はそそくさとスマホをバッグに仕舞った。
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