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民宿に戻って、まだ人のいない食堂で休憩をさせてもらう。
お母さんとパートさんは賑やかに、かつ手際よく夕飯の準備を始めていた。
歩き回って少し疲れた体に、お母さんが煮出して作った熱い麦茶が美味しかった。
「俺、着替えてくるから」
「…うん」
私は少し後悔していた。
市原さんはこれから練習なのだ。
少し、振り回しすぎたかもしれない。
すると、そこにお父さんが裏口から食堂に入って来た。
「修司、先に行ってるぞ」
「ああ。もうすぐ行く」
短い言葉を交わしただけで、お父さんは先に行ってしまった。
お父さんは物静かで、私がここに来てから、挨拶以外はほとんど話さなかった。
けれど、お母さんを交えると、そのペースに乗せられながら、私にも笑顔で話かけてくれた。
素敵な夫婦だなと思った。
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