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「今日は行くだろ?」
市原さんが母屋に行きかけながら私を振り返る。
私は無意識にお母さんに視線を向けた。
彼女の許可がいるような気がした。
お母さんは厨房のカウンター越しに市原さんに言った。
「だから、わざわざカッコ悪いところ見せなくていいでしょ。早く着替えて行きなさい」
予想通りの返事だった。
「お袋のことは気にしなくていいから。お前が行きたきゃ行けばいい」
「…ううん。待ってる」
「見たかったんだろ?」
「…いいの…少し疲れちゃったから部屋で休んでる」
私もイスから立ち上がった。
言葉の雰囲気と態度でわかる。
お母さんは
私を練習場に行かせたくないらしい。
お母さんは私にも優しく接してくれる。
だけど
女で
部外者で
市原さんの彼女でもない私には
神聖なお祭りの練習を見せたくないのかもしれなかった。
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