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そこはいくつもの山形の岩が並んだ小さな岩の島。
小さな岩に腰を据えれば、浅瀬に足を浸(ツ)けることもできる。
飛び石のように並ぶその岩の上を歩いたり、通り抜けることのできる大きな岩のトンネルまである。
「すごい、海の公園みたい」
こんな風に私がはしゃいでしまっているけれど、子供が喜びそうな場所だった。
「俺たちの…秘密基地だったんだ」
「…俺たち?あ、お兄さんとの?」
「…そう」
「いいなあ…子供の頃にこんな素敵な場所で遊べるなんて、羨(ウラヤ)ましい」
市原さんは私の言葉に少しだけ目を伏せて笑った。
…なんだろう。
お母さんに感じた違和感と同じだった。
それを感じながら、逆に私は思いっきりの笑顔をつくる。
「あっちはどうなってるんですか?」
私がトンネル岩の向こう側に行こうとすると、市原さんが叫んだ。
「稲森!」
彼の大きな声にビクリと体が跳ねて振り返る。
「…何ですか?」
「危ないから離れんな」
「あ、ごめんなさい」
私は足を止めて、その先に行くのをやめた。
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