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市原さんがそばに寄った私の手を握る。
「ここは…稲森には見せてやりたかったけど、長くいるところじゃない。浜の方へ行こう」
私は市原さんの顔を見上げ、その表情に小さな笑みをつくって頷いた。
市原さんが前を向いた隙(スキ)に私は振り返って岩場の光景を見渡した。
波は穏やかで、丸く削られた岩は優しい。
上空にはあのウミネコかカモメなのか、何羽のも白い鳥が群れを成して旋回していた。
時間が許すのなら、ここで市原さんと話しながら過ごしたかったのだけれど…
そんな雰囲気ではなかった。
海には…
私の知らない危険が存在するのかもしれない。
市原さんが私を見降ろした時の視線は…
ベッドの上で私に向ける視線と
同じだった。
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