さよなら

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朝日を見て不快になる者はあまりいない、そんなのは吸血鬼や昼夜逆転した引き籠りくらいだ いや、〆切り間近の漫画家や同人作家etc.なんかの人は朝日が昇るのを別の意味で嫌っていたな そんな俺は合わせたくない顔を嫌でも拝まなきゃいけない事実がある為に朝が来るのを大変嫌がっています 来ちまってるんだが ベッドから起きて痒くもないのに苛立ちからがりがりと掻きつつ着替える その際にちらっと窓から覗き見た外の風景は宛ら要人警護でもしてるかのよう 「ハッ仕事熱心なこって」 何にしても邪魔くさい事に変わりはねぇのさ、まあ釘刺したお陰か館の敷地内、詳しくは門は越えて無いみたいだしそこは良しとしよう、本当は嫌だけど んで着替えが終わった俺は食堂へ移動、席に着いてから違和感が 「ああ、あいつら向こうか」 どうにも静かだと思えば葱娘や萃氷なんかは今海の上だった 二人居ないだけなのに館内がなんだか広く感じやがる いつもならローグやエテコウと笑ってる葱娘の声も、朝まで終わってない課題に嘆く萃氷の騒ぐ声も 聞こえない 「物悲しそうだね絶月」 「エルか、なんか静かだなってさ」 二人が居なかろうとローグ達は何かの話題で笑うし、かと思えばヒエンにちょっかい出して騒ぐし 耳を済ませば日常ではあまり変わらない音は鳴る 「………静か?」 彼女だってこの食堂に響く音を聞いて首を傾げた、何処も静かじゃないだろうと けれど俺の中では、とっても 「静かだ、凄く…凄くな」 俺の見る光景に欠けた騒音は最早無音、何て言うかさ、寂しいよな
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