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二人が会って、おしゃべりを始めて一時間が経過したころ、翔子は勇気を出して聞いてみた。
「由美ちゃん、元気そうでよかったー。二年ぶりに会うから、性格とか変わっていたらどうしよう?とか思ったけど、それも全然ないね。昔のまんまの由美ちゃだね!」
「もちろん!翔ちゃんも変わらず昔のまんまって感じ!」
「でもあのときはびっくりしたね。由美ちゃん、聞かないでおこうと思ったけど、やっぱり気になるから聞くね。あのとき、何があったの?何で急にいなくなったの?」
しばしの沈黙が続いたあと、由美が口を開いた。
「翔ちゃん、私のお父さんが会社経営していたの知っているよね?」
「うん」
「それでね、その会社、詳しい事情は分からないんだけど、お父さんとお父さんの会社の人が揉めて、おおごとになったみたいなんだ。そこで、はじめて知ったんだけど、お父さんの会社、給料も色々と銀行からお金借りて、やっと給料を払っていたみたいなんだ。それで、あとは思うように利益も出せなくて…。」
「そうだったんだ。」
「お父さん我慢の限界だったんだと思う。だから、あのとき、お母さんにもその矛先が向いて…。それで、お母さんは情緒不安定、お父さんはあの日からどこに行ったか分からなくて、それでお母さんの実家に行ったんだ。」
「それで由美ちゃんのお母さんは、大丈夫なの?」
「うん。大丈夫ではあるけど、前みたいに元気ってわけじゃないかな。」
由美の家庭にそのような事情があるなんて、翔子は知らなかった。 由美のさっきまでの表情とはちがい、辛そうな表情を浮かべているのをみて、自分の無神経さに腹が立った。そのとき、由美が口を開いた。
「翔ちゃん、私たち、最高の友達だよね?二年ぶりに会ったけど、最高の友達だよね?」
「うん。当たり前じゃん!」
素直な翔子の気持ちだった。
「翔ちゃん、お願いあるんだけどいい?嫌だったらホントに断っていいから」
「いいよ、言ってみて」
翔子の前に一枚の紙が出された。
「これ、保証人が必要なんだ。でも私たちの事情を知っている人は誰も保証人になってくれなくて。翔ちゃん、私たち、最高の友達だよね?」
翔子は「うん」ということしかできなかった。そして、翔子はペンを握り、その紙へと手を伸ばした。
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