第1章

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「翔ちゃん!外からみたいだよ!」 「由美ちゃん、行ってみよう!」 二人は恐怖心はあったものの、先程のみたいに慎重にばかりなってはいられなかった。とても嫌な予感がしたのだ。なぜなら、その窓ガラスの音は外から聞こえた。おそらく、由美の家の窓ガラスが割れた、いや割られた音であろうことが二人ともわかっていたからだ。 外に出ると案の定、由美の家の窓ガラスが割れていた。二人は急いで、家の中へ入っていった。そこには予想もしない光景があった。 おそらく死んではいないだろうが、血を流して倒れている由美の母親。そして、無言で家の中で暴れ、手がつけられない由美の父親。 本来なら由美の母親を助けたりするのだろうが、二人はそんな余裕はなかった。この家の子供である由美ですら、普段は温厚で怒ったことすら、怒られたことすらない家庭でのこの光景があまりにも衝撃すぎたのだ。おそらく、それは翔子も同じ思いであったにちがいない。 近所の人も窓ガラスが割れる音を不信に思ったのだろう。二人が呆然としているなか、パトカーのサイレンの音が遠くから聞こえ、それはどんどん大きくなり、由美の家の前で止まった。
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