第1章

8/10
前へ
/10ページ
次へ
あの日から二年後、翔子が社会人となり、二年目に差し掛かったときの二十四歳。翔子の職場へ一本の電話がかかってきた。 「野口さん、電話だよ。内線二番につなぐから。」 「はい、わかりました。二番ですね。」 「もしもし、お待たせしました。野口です。」 「野口翔子さんで間違いないでしょうか?」 どこかで聞き覚えのある声だった。 「はい、そうですが。失礼ですが、どちら様でしょうか。」 「やっぱり翔ちゃんだ。翔ちゃん、声忘れちゃった?」 あっ!と翔子は思った。そう、その声は忘れるはずもない人の声だった。 「由美ちゃんだよね! ひさしぶり! どうしていたの?元気なの?」 連絡もとれなくなってしまった由美の電話に、職場であるにも関わらず、興奮のあまり、声が大きくなってしまった。 「うん、心配かけてごめんね。やっと落ち着いたからさ。携帯もなくしちゃって。でもバタバタしていたから、こっちからもなかなか連絡できなくて。落ち着いてから連絡しようと思っていたら、こんな時間かかっちゃった。そうそう。翔ちゃん今日、すこし時間あるかな?あるなら、翔ちゃんの職場のすぐ隣にあるお店で会いたいんだけど。」 「大丈夫だよ。仕事6時には終わるから、その時間でどうかな?」 「じゃあ、その時間で。翔ちゃん、仕事頑張ってね」 「うん。由美ちゃん、またあとで」 翔子は久しぶりに由美と会える嬉しさもあり、ハイテンションで仕事に取り組んだ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加