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自分の事は詐欺師だと思っている。
物心ついた頃、魔法使いだと信じていた祖父がマジシャンであり、つまりはすべてがトリックなのだと教えられた時に、世の中にある不思議なものに対する憧れは消えた。
すべての事象にはきちんと意味がある。
どんなに不思議に思えることでも、ちゃんと理由がある。
それに気付かないか気付かせないか。
解けていない謎もいつか解ければ、なあんだとそう言われるようになる。
そんなの……つまらない。
理由を隠せば物事は不思議になる。
自分の理由を隠して、自分の影を消せば、僕は不思議というカーテンの向こうに潜むことが出来る。
謎のままでいられる。
そして、謎は人を惹きつける。
本当の自分を見せずに他人を惹きつけることは快楽だ。
だから僕はマジシャンなのだし、マジシャンはそう。
…………詐欺師なのだ。
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