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東側に下るカバンサイト河に太陽の光が反射する。河には船が浮かんで人々の日常を助けていた。船は鉄という塊でできている。アリシャは船を眺めるのが好きだった。どうやって河を走るのか構造まではしらなかったが。
マルテア城下と隣国ブルートを繋ぐカクタス橋には、商人の荷馬車が行き来する。カクタス橋はマルテアにとり、生命線に等しかった。
アリシャの乗った馬車は、カクタス橋を通りすぎてマルテア城の城門を潜り抜ける。
城のロータリーに馬車を停めたキラクは、アリシャとクロウから離れて詰所へ報告に出向いた。
アリシャは着物の袖に着いた汚れを気にする。盗賊の返り血だ。洗って取れる訳でもない。汚れのことを諦めたアリシャは城内に入り、自室に足を向ける。
「クロウ、晩餐一緒にするでしょう?」
「いや。俺は部屋に居るよ。あとでパンでも運んでくれ」
クロウはアリシャの数歩後ろを歩いていた。二階へ続く階段は二人でならんで歩ける広さだ。
「遠慮しなくていいのよ?」
「朝も軽食でいい」
「食べないともたないよ。今日だってかなりの量を動き回ってたんだから」
「公務と同じだよ。朝から晩までお茶だ。砂糖菓子並べられる地獄を見たことあるか?」
「紅茶も菓子も見たくはないようね?」
「席に居ると飯のあとまで茶会だろ。俺は疲れたの」
「本当に我が儘」
「飽きるだろ。茶会。話題なんか政やら金の話で民の話なんか誰もしない。あれだけ退屈で暇で重圧な時間はない」
マルテア城の二階に伸びる廊下に二人の足音は響いている。
メイドと執事が部屋の掃除をする手を止めて、二人に深々と頭を下げた。
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