一章

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 二人は軽く手を翻して歩みを続ける。アリシャの部屋は一番奥だ。 「こっちもあっちも公務。それが一番のお仕事。私、二番なのよ。まだ自由でいいわ」 「どたちが我が儘だ」 「どっちもどっちよ。着替えてくるから外で待ってて」 「このままベッドに持ち込んでやる」 「ずるいっ。卑怯ね」  アリシャは、クロウに部屋に押し込まれながらも抵抗はしない。 「この着物だって、盗賊がどこからくすねた物を取ってきて使ってる」 「良いじゃない。気に入っているの。変かなあ?」 「似合うけど、俺より?」 「半々」  寝台にアリシャの背中は押し付けられる。クロウの指先が、アリシャの肌をなぞる。衣服を剥がされてアリシャは身を捩る。紫色をした打掛と藍染の着物の合間から白い肌が覗く。クロウが覆い被さり、アリシャの頬に触れる。ベッドが僅かに軋んだ。 「じゃあ、何時も通り、認めるまで許さない」  微笑むクロウの口許が意地悪い。 「ばか」  口付けられて言葉は無くなる。外にメイドたちの足音を聞きながら部屋には水音が響き渡る。
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