一章

9/42
前へ
/136ページ
次へ
 クォーツ街道は危険だ。道が曲がりくねっているし、道幅も狭い。  アリシャは剣の腕前は芳しくない。馬の扱いと銃が得意だ。銃は銃でも狩りをするための銃なので戦い向きではない。普段も持ち合わせていない。練習時だけフォルスターから抜き出す。射撃用の銃は狩りでしか使わないのがこの国であった。キラクも余り使用しない。攻め込むことに有利でも今回のように人質ごっこでは使い勝手が悪すぎる。  危険を知っても、助ける術がない。武器の性能としても宛にならない。銃器については発展途上であった。  クォーツ街道は諦めさせようか。せめて豪雨でも降ってはくれないかとキラクは占いカードに手を伸ばした。  タロットがキラクの隠れた趣味だ。黒魔術や魔法にも精通している。  キラクの実家が魔法使いの家系だ。キラク自身もそれなりの魔法を扱うことができる。  キラクが巡ったカードは、塔だった。逆位置だ。インスピレーションに任せるとあまりよろしい象徴はなかった。カードを伏せる。仕事を早めに終わらせなければならない。  クロウは止まっていたペンを動かし、先程の盗賊たちの資料を纏める。  資料には人数、武器、押収物、アジト現場の説明、日付、時間と事細かに記載する。毎日の日課だ。慣れたものであった。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加