一章

10/42
前へ
/136ページ
次へ
 今夜は、ある会合に出向くことになっていた。会合には名前がない。会合は会合であって、夕食は、会合で済ませる。 キラクは、仲間に部屋に戻るとだけ告げて、駐屯所を出た。  外には帳が落ちる。  街はランプに照らされていた。朝方と夜では景色が違う。左右に並んだ店では客の呼び寄せが盛んに行われていた。店頭にある作物を売り捌こうと値段を下げている姿も見てとれる。賑やかに楽器演奏をして駄賃を狙う子供や歌いながら躍りを披露する娘がいる。城下の夜は真夜中まで喧騒で溢れかえる。  キラクは、華やかな表通りを外れて人気の無い道を通り、薄暗く狭い道を歩く。  会合は教会で行われる。皆、教会に入るまでは布で顔を隠している。会合の関係者は皆が皆素性を明かさないことが暗黙の了解だった。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加