一章

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「ねえ。誰か妖精を知らないの?」  プラチナは美意識感覚が強い。夢に浸るプラチナが対抗意識を見せるのは今に限ったことではない。  キラクは知らない振りをする。口にして良いことか悪いことかくらいの断捨離できる。  周囲も首を傾げるだけだ。パールに至っては食べることに集中している。話に興味がないわけではなく、食事はこの場だけなのだろう。活発な眼差しとはにつかないほど手足は細い。肩幅も華奢で痛ましいほど病的なのだ。衣服もプラチナが会合ように与えた黒いワンピースを縫い合わせて着ている。パールとアリシャを並べると同じ年齢であることを忘れてしまいそうだ。 「妖精は月に住んでいる。森にはおらん。塔は妖精の国に繋がると昔からの言い伝えである」 「またまた。伝説を信じ過ぎです。ムーン博士」  意地悪くルビーが言った。ルビーを名乗る男はキラクと同い年だ。隣国から来ているので街で顔を合わせる心配はない。ルビーが女だと思っていただけに意外であった。綺麗な顔立ちをしている。赤い瞳と赤毛が印象的だ。やんわりとした口振りと腰に取り付けた剣が、隣国の兵士であることを示している。衣服は会合様の外套だ。布を被られては知り合いでも判別が難しい。おそらくそうなのだろうという推測や想像の領域だった。
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