一章

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「妖精が神様に言われて作った塔。何億年も昔に獣(ビューマ)を閉じ込めた場所。それから、神様の世界と人間界を繋いでいる塔でもある。中に魔法使いが住んでいるという現代的な伝説もあった」  サルファーは少年独特の表情をして、黄色の眼差しで満遍なく皆を見渡す。広げられた書物の背表紙に王家の紋章が描いてある。キラクは思わず口を吐いた。 「王国図書館の本ではないですか。どうやって持ち出したのですか」 「トパーズ。固いことを言うなよ。秘密だ」  サルファーが舌を出した。キラクも追求は避ける。粗相は厳禁だ。サルファーがどこの人間かキラクは知らない。周りも追求はしない。 「獣ね。どんな獣?」  プラチナが興味津々と訊ねる。 「女を喰らう凶暴な生き物で触手を持っている。雑食や霞を食らって生き長らえているとあった」 「ほんとだ」  サルファーから書物を奪いダイアが呟く。  キラクは彼等の会話を微笑み聞いていた。可愛らしい夢物語を語りながらブレイブの真相を探す姿は、アリシャと変わらない。キラクはトパーズとして会話に混ざり続ける。  ブレイブのことはキラクだけが知っている。ブレイブには、獣がいる。それは当たっている。ただ、キラクは魔物と呼んでいた。
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