序幕

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 アリシャが住んでいるマルテア王国の近くにハーキマの森がある。  針葉樹が立ち並ぶ森の奥には、天を突くように聳える高い塔が建つ。  塔はブレイブと呼ばれ、民は近付くことを禁じられていた。  アリシャは、昔から好奇心旺盛な娘で、八歳の時、付き人のキラクを騙してブレイブに近寄った。  聳え立つ塔はアリシャにとってはとても魅力的な存在だ。  両手を広げても抱き着けない。太くて背だけが高く、天井は雲の上にあった。  アリシャは塔の周りを歩き回って扉を見つけた。おそるおそると近づいて手を伸ばす。  蔦と蔦の間に扉が、隠れていた。鉄の扉だ。雨風に晒されて錆び付いた扉に把手が付いている。  扉を開こうとしたアリシャは把手(とって)を回す。鍵が掛かっていたようで錆びれた扉は開かない。  無理矢理入ろうとしていたアリシャの頭を付き人の男が小突く。
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