一章

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 キラクとダイアは例外だ。雰囲気で取り付けたとプラチナは最初に言った。  キラクがトパーズという石を見たことがあるとすれば、髪飾りをこよなく愛する王妃の寝室であろう。紫色をした小さな石が髪飾りの先に取りついていた。色も様々あると聞いているが、紫色が一番流通しているとのことだった。  アリシャの母親は髪飾りのコレクタといっていい。マルテア国民の全てがそれを理解している。プラチナも石が好きだと話しているところからすると王妃とは話が合うような気がした。  キラクが余計なことを考える間に、テーブルに甘味が並んだ。  質素な食事とは掛け離れた逸品に白葡萄酒が継ぎ足される。  白葡萄酒は民間人にとって、貴族が毎日たしなむ御茶と同じだ。  甘味はラズベリーが乗るシフォンケーキだ。クリームが少しだけ贅沢に乗せられている。 「これは奮発したわね」  ダイアが手を叩く。 「クリーム。パール喰う?」  サルファーは早速フォークを突き刺した。しかし、食べるわけではなさそうで、取り分けてパールの皿に一口分譲る。 「ありがとう!」  パールが無邪気に礼を述べる。 「いいよ。外出たら喰えないだろ」  サルファーは八重歯を覗かせて笑った。
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