一章

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 恐らくは長い間、キラクが白い燕尾服を着ていたからかもしれない。  自警団が用意した制服を何度見てもクリーム色の衣服と茶系のズボンに茶色の革靴はアリシャの美的センスに違反していた。  キラクには白か赤が似合う。翠もいいかもしれない。アリシャはいつも思うのだが、キラクは受け入れてはくれない。  理由は簡単だ。今着ている衣服が自警団の象徴であり、兵士で言う軍服の役割をしているのだ。  アリシャもそれくらいは理解している。それでも、似合わないと感じてしまうのだ。キラクも頑固なところがある。クロウもアリシャも頑固だから三人で意見が分かれたときは苦労する。アリシャは視線を落とした。森の草は草原の草とは違った感触がある。アリシャの足元には緑色の草が生える。 「さ。帰りましょう。馬を見付けられては困るでしょう」
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