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キラクが肩を竦めた。
「まだ、私の質問に答えていないわ。顔の傷を誰に付けられたの?」
アリシャはキラクに詰め寄った。単純に怪我の心配をしたのだ。
「気になりますか?」
「普通に考えても顔に爪を立るって想像できないのよね。よっぽど、相手は癇癪持ちだったということでしょう?」
「アリシャ様には叶いませんね。ええ、娼婦に言い寄られて拒んだ結果がこれですよ」
頬の傷と襟の口紅を示したキラクが盛大に溜め息を吐いた。アリシャは思わず笑ってしまう。
「余程気に入られたのね」
「娼婦にしておくのが勿体無いほどの女性でしたよ」
「ねえ。キラクは結婚しないの?」
アリシャは森の外へと向かって歩き出す。
「縁があれば考えますがね。今のところ好みが寄ってくる気配はありません」
キラクがアリシャの後ろで小枝を踏んだ。小さな音が森に響く。空に鳥がはためいた。
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