一章

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 青年の背後には縛られたアリシャと付き人のキラクが居る。  アリシャは手足をがんじがらめに拘束されていて身動きが取れない。藍染の着物が依れて白い肌も剥き出しだった。 「アリシャ様。誰が貴方を拐い、このような枷やら縄をつけたのかご婚約者であられるクロウ様に教えていただけませんか?」  キラクが手際よく枷やら縄やらをアリシャから外していく。 「全員」  アリシャは手足を動かして、はだけられた衣服を手早く纏う。洗練されているのはこれが始めてではないということだった。  どんなに鈍感な盗賊達もアリシャの健康的な肌とトレードマークの釵に気が付けば罵倒も悲鳴に変わる。  釵(かんざし)に揺れた飾りは、小さいとはいえ翠色の水晶で、地方では珍しい逸品だった。
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