第1章

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彼女が何処に住んでいるのかも知らないし、電話番号すら知らない。 私は連絡先を聞かなかった事を激しく後悔しながら、庭にある空っぽの犬小屋を見つめていた。 外はずっと雨が降っていて視界が悪い。 探しに行く事など不可能だった。 私の実家は私以外の人の気配があるもののその姿は見えない。 人数もわからない。 家族と一緒に生活している実感は弱々しく、一人では住む筈のない実家に長い時間私しかいないようにも思えた。 久しぶりに見たクラスメイト。 私の手元には子どもの頃の写真が殆どない。 写真でその姿を確かめようもないけれど、彼女の目元にある小さな黒子をよく覚えている。 覚えているなんて可笑しな話だがソバカスのような泣き黒子が昔からあった筈だ。
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