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──閉じ込めていた思い出は今も鮮明で、あの表情も、仕草も、声でさえも、色褪せることなく呼び起こせる。
…ばっかみたい。
崇憲と終わって少しは成長出来たと思っていたのに、なんにも変わってないじゃないの。
わたしって一度好きになるとしつこいね、ほんと。
これから会う人は龍成を忘れさせてくれるかな。そんな人だったらいいな。
…さすがに会う場所までは同じじゃないか。
タクシーの進む方向は全く違う場所を目指している。
でも、なんだかこの方向って……。
頭によぎったその場所に、タクシーは停まった。
どうして……。
ここは、龍成との思い出の場所。
二人の記念の場所。
一面に夜景が広がるその場所に、車に寄りかかり誰かを待つ、一人の男の人を見つける。
急に胸が高鳴るのを感じながら、わたしは震える手をぎゅっと抑え、タクシーを降りた。
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