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タクシーがいなくなり、辺りは真っ暗になる。
より夜景が映えて、それは息を飲む程の美しさ。
だけどわたしは夜景を見る余裕なんてない。
胸の鼓動に押しつぶされそうになりながら、一歩、また一歩と彼に近づいていく。
どうしてだろう。視界がぼやけてくる。
涙が出ないように上を向く。
流れ星が降り注ぐかのような満天の星空。吸い込まれそうになりながら、手を握りしめ涙を抑える。
一瞬閉じた瞼を開き前を見据えると、その姿が誰かをはっきりと認識した。
──だめ、やっぱり止められない。
涙がこぼれ落ち、気づかれないようにサッと拭う。
暗いから、きっとばれない。
少し俯き気味に近づいた。
「そんな固くならなくていいから」
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