自己投資

2/3
前へ
/179ページ
次へ
優は既に東大受験に向けて動き出していた。 大げさかも知れないが…これが自分の運命を分ける、 人生最大の賭けになる。 そこまで思い詰めていた。 文型の教科は美香が残したノートをくまなく読み漁り頭に入れてゆく。 百合子と会う時間もぐっと減り、テスト期間中は集中力が落ちるので一切連絡を取らなかった。 テストが終わった週末、美香が東京に向かうと 百合子はデパートの食材を持って優を訪ねる。 優に美味しいものを食べて欲しいのと自らを捧げる為に…。 自分の家よりもずっと小さい不便なキッチンで料理をする新鮮さ。好きな人の為に食事を作るという少女のママゴト…。 優に必要とされている瞬間はたまらなく幸せだった。この人の寝顔も身体も知ってるのは私だけ。 私は佐藤優の彼女なんだ…。その現状が百合子の一番の優越感だった。
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加