2-家族

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○僕の退院のこともあり、張り切ったのだろう、唐揚げはかじれない程に熱くて、内側からは汁が溢れ、それでも噛んで口の中へ入れると絶品だった。白米は炊きたてで、言うのも悪いが病院食の何十倍も美味かった。 ○食べている間、妹や母や、父が入院生活や足の状態など、いろいろ僕に尋ねてきた。退院して戻ってきたはいいが、足が不自由な身、様々なことを決めたりしなければならない。例えば病院では、自分の病室がある階の範囲だけしか行動しなかったので階段に苦しまずにすんだが、家だとまず自室へ行くのに階段を利用しないとならない。階段を松葉杖で昇降すると腕の力をかなり使うので辛い。できない訳じゃないが、頻繁に利用するなら人の助けが必要になる。 「なら、春斗(はると)の寝室を一階に移したほうがいいだろうな」 ○父が麦茶を自身のコップに注いでから言った。……一階は死んだ祖母の部屋があるはずだが。 「化けて出て来られても、婆さんなら怖くないさ」 ○それを聞いた途端に妹が吹き出した。一階に寝室をあててくれるのはありがたいし、想定していたことだが、いざそれが祖母の部屋と聞くと複雑な気持ちになる。確かに祖母は怖い人ではなかったけども。 ○父はそう言った後、不謹慎だと母や妹に咎められた。
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