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「全然。授業も自主勉強で追いついてきたし」
「そうね、勉強は私も大丈夫だと思うわ。ほら、友達がよく見舞いついでにノート見せてたわよね?」
「うん。それで授業の進み具合を知ることができたから」
「いい友人ね。ただーー」
○膝の上で手を組んで、辛そうに言う。
「部活のほうは、どう?」
「……あぁ」
○僕も非常に気になっている件だ。手術を終えて一週間が過ぎた頃に、部活の顧問が見舞いに来てくれた。顧問は『メンバー皆が斎藤を心配しているし、また部活に戻ってきてくれることを願っているよ』と優しげに言ってくれた。だが、見舞いにはメンバーの誰一人来てはいない。棚に飾ってある写真は、顧問が持ってきたものであった。
「部活の様子が分からないんだ。クラスの友達は来ても、メンバーは来なかったし」
「…そう」
○城崎さんはそこが気がかりだったのだろう。それについて訊きたくて、今日は来たのかも知れない。
○どうしてか彼女に心配されるのが嫌で、僕は強気に明るく振る舞おうとする。
「でも、帰ってきたら歓迎するとも言っていたし。きっと僕を驚かすつもりなんだよ」
○そう言ってみたら、
「ふふ、そうよね。なら斎藤くんも心づもりしないとね」
○城崎さんは笑ってくれた。
○無理矢理の笑顔に見えた。
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