1-退院

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○今から二週間前。怪我が治り、右足の指が動くのを確認されると最初のリハビリは行われた。 ○リハビリと言っても、やったことはというと、まず右足がどのくらい持ち上がるかだった。ベッドで右足を上げてみると、事故以前よりそれはずっと重たく感じた。担当医は、太ももの力だけで持ち上げているからだと言った。そして、膝から下を動かせるようになるには、日常的な筋力をつける運動と関節の曲げ伸ばしといった”慣らし”が大事だとも言った。 ○僕はまた部活ができるようになれますか、と尋ねた。 ○担当医は難しそうな顔をして答えた。 『多分、無理だろう。斎藤くんの足を走れる状態にまで良くするには、もっと長い時間が必要なんだ』 ○それから、僕は夜中の隠れリハビリを決意した。消灯時間を過ぎても、右足を上げたり下ろしたり、足首を手で回したりを繰り返した。ベッドから降り、松葉杖で体を支えながら床に右足を着けてみたりもした。懐かしい思いがした。 ○廊下に出るようにもなった。階段の昇降はできないので、病室のある階だけしか移動しなかったが、歩けるようになりたいという想いはより強まった。 ○だが一向に右足の回復は進まなかった。焦る必要はないとも言われたが、部活のことを考えると焦らずにはいられなかった。
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