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コンコン────
部屋の扉をノックする音に、四人はじゃれるのを止めて「はーい」と声をかける。
入ってきたのは此処の民宿を切り盛りする女将さん。
老婆と言って良いのだろうか…、歳は恐らくそれくらいだろうがシャキシャキしてるし背筋もピンッとしてる。
和装がよく似合うお婆さんだ。
「この度は遠くからこの宿に足をお運びありがとうございます。お部屋に不適合御座いませんでしょうか?」
女将さんは皆を見渡して更に言う。
「何かありましたら直ぐ対応しますので受付までいらしてくださいね」
人の良さそうな笑顔がよく似合う。
「それと、先程言い忘れてしまったのですが………」
言った瞬間、フッと張り付けていた笑みが消えた。
文字通り消えたのだ。
無表情の能面みたいに。
此方は皆、笑顔で頷いていたものだからその変化に皆戸惑って顔が引きつった。
「……………っ」
私が息を呑んだ。
コクリとしたその音もどこか大きく聞こえるほどに、部屋はシンッと静まり返ってしまっていた。
私達を無表情に見据える女将さん。
その口がゆっくりと動き、静かに、だが脅すような口調でこう告げた。
「この村は森に囲まれております。深い深い森です、一歩たりとも足を踏み入れる事は…どぉぉぉぞなさらないでくださいね」
その物言いは、まるで老人が子供を怖がらせようと声色を下げてわざと怖くしようとしてるソレに似ていたけど、私達にそれをやる意味が分からないし、更には言い知れぬ鳥肌がプツプツと浮かび上がった。
ぞくりと悪寒までする始末。
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