第1章

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ヨウが自分の話術の巧みさに自信を覚えたのは、中学生の頃だった。 ヨウは、とてもゲームが好きだった。ゲームが好きなので、ゲーム好きの友達からよくソフトを借りていた。もちろん借りたものは返した。だが、一度だけ、どうしても欲しいゲームがあり、それを両親にねだったが、買ってもらえなかっので、ゲーム好きの友達からそのゲームを借りることにした。 そのゲームをプレイしていくうちにヨウは、やっぱりそのゲームが欲しくなった。両親に一度ねだったが、ダメだったので、その借りたソフトをそのまま返さないと決めた。悪いことと分かってはいたのだが、理性より欲望のほうが勝ってしまった。 ソフトを借りて約一ヶ月後。掃除時間のことだった。 「ヨウ、そろそろ貸したゲーム返してほしいんだけど」 「何のソフトだっけ?」 「ドラキューファイブだよ。貸したろ?」 「あれ、返したじゃん。忘れたの?」 ヨウはドキドキしながら、しらばっくれた。 すると、友達は語気をあらげ、 「返してねーし!お前、借りパクするつもりかよ! 返せよ!」 補足をいれておくと、借りパクとはヨウたちの周りで使われている「借りたままパクる」という意味である。 ヨウにいきなり殴りかかってきたので、思わず、ヨウは手をだしてしまい、その友達が泣いてしまった。ヨウは焦った。いままで、喧嘩すらしたことなかったのに、しかも自分が悪いのに、自分の感情のみに動いて殴ってしまった。友達に怪我らしいケガはなかったのだが、周りに人が集まってきていることもあり、たまたまそこを通りかかった担任の麻美先生が軽く事情を聞き、ヨウは生徒指導室へ呼ばれることになった。ヨウは泣きそうになり、自分のしてしまったことをとても後悔していた。それだけでなく、生徒指導室へ呼ばれ、親を学校へ呼ぶのだろうか?という恐怖心と向き合うことになってしまった。
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