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「夢ってさ、また自分が怪物になる夢?」
通学路を歩きながら上半身を傾けて七美の顔を覗き込む。七美より少し背の低い和穂がさらに低くなる。
「うん。ちゃんと意識はあって……明晰夢ってのかな」
「怪物ねぇ……ガオ~!」
両手を上げた和穂が七美に飛び付く。耳元で荒くなった息遣いが分かる。
「え~い、ぐさーっ」
「ぬわぁ!」
ナイフを持ったフリで和穂を刺す。大袈裟に両手を上げて大声を出す。
「も~、他人事だと思ってからにぃ」
家から高校までは徒歩で30分かかる。途中にコンビニがあり、和穂はよくそこへ立ち寄る。
「さ~て、何食おうかな?」
「よく食べるね~、これでよく太らないわ」
上機嫌で和穂は奥のパンが並ぶ棚に直行した。棚からはみ出した頭が左右にきょろきょろと動く。
眺める七美の元に二人組が寄ってくる。1人は茶髪、もう1人は小学生と間違えそうな程に低い身長をした女子だった。
「明神さんに美黄ちゃん、おは~」
「おう! おはよ」
クラスメイトの美黄はとなりの明神が耳に手を当てる程に元気な声で挨拶する。
「さ、お菓子買お! いくよ」
七美と明神を引っ張りパンの棚の反対側にある所まで連れていく。
「これどうかな?」
「あんた、シャボン玉食うのかよ」
七美は子供っぽい美黄と保護者のように一歩引いて突っ込みをいれる2人を眺める。
「人気あるのよね~美黄ちゃん」
身長や素行からクラスのマスコットとして皆からちゃん付けで呼ばれる程の人気を持つ。
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