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<硝煙と廃片の王都・メディア>
気がついたのは、鼻を覆うような煙の匂いを感じたからだ。
確か王都で地震が起こり、空に穴が空き、そして、崩れてきた瓦礫に呑まれ、気を失った‥‥
しかし、辛うじて‥‥いや、意外にも大した怪我もなく助かったようだ、とクロウは指先を動かして手足の感覚を確かめながら思った。
ゆっくりを身体を起こし、膝を付いて周囲を見渡すと、そこには。
クロウ「‥‥!」
真っ赤に染まる視界。
辺りに転がる黒焦げの物体。
燃え盛る王都。
変わり果てた王都があった。
クロウ「王都が‥‥燃えている‥‥!?」
サイナ「‥‥‥‥っ‥‥」
足元の瓦礫が動き、クロウはその下にいたサイナの姿を見つけ、透かさず抱き起こした。
クロウ「サイナ‥‥無事か‥‥!?」
抱き起こしたサイナは、頭から出血していたものの、大した怪我ではないようだ。
瓦礫の下敷きになっていたはずだが‥‥奇跡的に無事だった、ということなのだろうか。
サイナは目を開き、何度か瞬きをした後、ようやくクロウの顔を見た。
サイナ「クロウ‥‥」
クロウ「大丈夫か?」
サイナ「‥‥はい、なんとか」
サイナは頷いて立ち上がると、背負っていた太刀を手に持った。
異常事態であることを察知したのだろう。
サイナ「そんな‥‥どうして‥‥いったい何が‥‥」
クロウはまた足元を見回したが、クルーナの姿が見当たらない。
近くに人が埋まりそうな大きさの瓦礫はないし、転がっている黒焦げの物体は、大きさからしてクルーナよりも大きいし、あまり直視出来るものでもない。
自分達より先に目覚めて脱出したのだろうか? いや、彼女が自分達を置いて勝手に逃げるとは考えられない‥‥
サイナ「クロウ、気を付けてください‥‥」
サイナが警戒の色を滲ませた声で言った。
サイナの言っているのは、周囲に漂う雰囲気が変わった事に対してだろう。
程なくして、その雰囲気の正体が姿を現した。
地面に浮かぶ黒い靄。
それは涌き出る泥のようなものに形を変え、そしてそれはやがて、犬のような姿に変わっていった。
「グルルルル‥‥‥‥」
そして完全に犬の形に変わった黒い物体が、唸り声を上げる。
クロウ「魔物か‥‥!?」
サイナ「これが王都を襲った者の正体‥‥?」
クロウ「来るぞ!」
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