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――既にこの時から違和感を感じていた。
身体が覚えているはずの動きが、自分の想像しているよりも‥‥否、出来るはずの動きが、上手くいかないような。
まるで、自分の身体が錆び付いているように鈍い。
本能で動き回る獣に対してすら、苦戦を強いられていたこの現状に。
クロウ(どうなっている‥‥!?)
この熱気のせいなのだろうか。それとも、先程からうっすらと感じる異質な空気のせいだろうか。
サイナ「クロウ、油断しないで!!」
サイナの叫びに、クロウは剣に食らいつく魔物を振り払い、斬りつけて応える。
一撃を与えれば、魔物は崩れて霧散する。
実体を持っていない魔物。
召喚術の類いである可能性が高い。
と、なれば。
サイナ「クロウ、これは‥‥」
クロウ「ああ‥‥どこかにこの魔物達を操っている奴がいるはずだ‥‥」
王都を燃やした者と関連があるのは間違いないだろうが、だとしたら目的は何なのか。
先程の地震と関係はあるのか。
分からないことが多すぎる。
サイナ「とにかく、何処かに生き残りがいないかも‥‥」
そうだ。
まだ生き残っている人もいるかもしれない。
クロウ達は変わり果てた王都の貴族街に向かった。
◆◇◆
クロウ「くっ‥‥」
サイナ「‥‥ここもこんなにボロボロに‥‥」
貴族街も商区同様、建造物は崩れ、辺りは炎に包まれていた。
煙が立ち込め、満足に周囲も確認できない。
サイナ「‥‥父様、母様‥‥」
クロウ「‥‥‥‥」
確か、サイナの養父母は貴族だったか。
だが、今頃は‥‥
クロウ「‥‥!」
煙の中を進むと、石畳に浮かび上がるように、なにかが横たわっているのが見えた。
水色の髪の、少女だろうか。
辺りに比べて明らかに浮いているため、見つけるのは用意だったが、果たして生きているのか。
クロウ「おい、大丈夫か!」
サイナ「この人‥‥まだ息があります!」
怪我はしているが、まだ生きている。
見たこともない服装だが、貴族だろうか。
サイナ「とりあえず、彼女を安全な場所に‥‥」
?「それは困るなァ」
炎の中から声が聞こえた。
二人は反射的に武器を構える。
クロウ「誰だ!」
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