6人が本棚に入れています
本棚に追加
?「誰だ、ねェ。それはこっちの台詞だが‥‥フム、まぁ答えてやらんでもないぞ」
炎のなかから、ゆらりと姿を現したのは、男。
漆黒の変わった形の鎧を身に纏う白髪混じりの髪の男だった。
?「‥‥‥‥っ」
サイナの腕の中で眠っていた少女が目を覚ます。
少女は目を開くと、辺りを見回し、やがて小さく呟いた。
?「‥‥みん、な‥‥?」
?「ほう、目を覚ましてしまったか。まぁ良い。どちらにせよ卿らには死んでもらうぞ」
男が指を鳴らすと、周囲に先程現れたものと同じ魔物が地面から姿を現した。
クロウ「‥‥貴様の仕業か」
?「そうとも。この街を美しく染め上げたのは他でもない、この儂よ」
サイナ「美しく‥‥?」
?「なんだァ、もしや卿らも我が芸術的な作品を理解できないカワイソーな連中か? いやはや全く、いかんなァ最近の若者は」
なんだ、こいつは。
王都を滅茶苦茶にしておいて、何が芸術的か。
?「ンー‥‥やはり、飾り気の無い建造物も燃え盛ればそれなりに美しい‥‥だが逃げ惑い、やがて焦げた肉塊に変わりゆく人々の姿はやはりッ! いつ見ても心が躍る‥‥! そうは思わんかね、惨めな生き残りの諸君ッ!」
サイナ「‥‥何を言ってるんですか、あなたは‥‥」
クロウ「‥‥‥‥」
どうやら、まともな対話ができる人種ではないらしい。
?「‥‥ラヴィード君‥‥皆‥‥」
先程の水色の髪の少女は、小さく呟く。
サイナ「私の側を離れないでください」
?「‥‥あなた達は‥‥?」
サイナ「通りすがりです。とにかく、死にたくなければ動かないでください!」
魔物が一斉に襲ってくる。
この少女を守りながら戦わなければならない。
身体が思うように動かないこの状況では、決して簡単な事ではないが‥‥!
クロウ「たぁっ!」
クロウは魔物に飛びかかり、身体を剣で突き刺すと、直ぐ様石畳に剣で滑らせ、走りながら次の標的を切り上げて倒す。
死角から襲ってきた魔物の一撃を躱し、双剣で十字に切り裂く。
一撃さえ与えれば、奴等は消える。
だが魔物は絶え間なく襲ってくる。
クロウ「ちっ‥‥!」
サイナ「はああっ!!」
サイナは鞘に納めたままの太刀で豪快に薙ぎ払い、魔物を蹴散らしていく。
しかし倒したそばから沸いてくる魔物の前では、体力の浪費でしかなかった。
クロウ「やはり、頭を狙うしかないか‥‥!」
クロウは標的をあの男に定め、一気に距離を詰める。
やはり、身体が重い。
だが――――
最初のコメントを投稿しよう!