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◆◇◆
<王都メディア>
静かすぎる朝だった。
日差しが強く、暑い朝。
いつもは騒がしい王都も、今日は何故か静かだった。
サイナ「クロウ、どうかしましたか」
傍らにいた少女、サイナが口を開く。
茶色の髪に、背中には身の丈程の太刀を背負う少女は、こちらをじっと見つめている。
クロウ「‥‥静かだな、と思っただけだ」
クルーナ「そうかな‥‥私にはいつも通りに感じるよ?」
ひょっこりと顔を出した、こちらも少女。
左右で異なる瞳の色を持つ、サイナよりも幼い少女の名前はクルーナ。
込み入った事情があり、本来の彼女の身分には不相応な自分と共に行動している。
クロウ「‥‥‥‥」
そして少年、クロウは改めて周囲を見渡す。
道行く人々。それを引き止める行商人。
人数は確かにいつもの通りだ。
だが、何故だろう。
自分には全く、その人々の声が聞こえない。
クロウ「‥‥‥‥!」
一瞬、視界がぐらりと揺らぐ。
視界だけでなく、頭の中にも異様な感覚を覚えるなにかが走った。
サイナ「‥‥? なんでしょう‥‥地震でしょうか」
これは仲間達も感じていたようで、サイナやクルーナも足元や空を見回して警戒の色を見せていた。
クルーナ「! ね、ねぇ、あれ!」
クルーナが指差したのは、空。
見上げてみると、青空の中に、一つの小さな<黒い物体>が見える。
まるでそこだけ夜であるかのように。
そしてその物体は、みるみるうちに大きさを広げていった。
サイナ「あれは‥‥一体‥‥!?」
じわじわと空を覆っていく。
明らかに異常だ。
だが、あれが何なのか検討もつかない以上、こちらには為す術がない。
そして、王都の上空が漆黒に覆われた時だった。
ズズズズズ‥‥‥
強い地響き。
思わず三人は地に手をつき、身体を支える。
クロウ「なんだ‥‥これは‥‥!」
クルーナ「空が真っ暗になったと思ったら立て続けに地震なんて‥‥!」
闇に覆われた王都に、強い地響きが襲いかかる。
倒壊する建造物。
降り注ぐ瓦礫の雨が三人に降り注いだ。
意識を失う刹那、クロウは見た。
見たこともない場所に生えた大樹。
そして、一人の少女の姿を。
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Tales Club Project-Chaotic Earth-
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