第三章

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『体が冷え切っているわね。今温かい飲み物を持ってくるわ』 アツシはシスターの優しい言葉に堪えきれず涙を零す。 『どうぞ』 シスターは温かいコーヒーを淹れてくれた。アツシはカップを受け取り口をつける。熱いコーヒーが喉を通っていくと、少しだけ体が温かくなった気がした。 『ありがとうございます』 アツシが礼を言うとシスターはにっこりと微笑んだ。 『神の子を助けるのは当然の事。あなたは護られているのですよ』 シスターはそう言ってアツシの胸元の十字架に触れた。 『あの…』 アツシはコーヒーを飲み終えるとためらいがちに口を開いた。 『どうしました?』 アツシの目はピアノを見つめていた。シスターはそれに気づいたのか優しく微笑んだ。 『ピアノを弾いてみる?』 見透かされているようで恥ずかしくもあったが、アツシはシスターの言葉に頷く。 そんなアツシの様子を見たシスターは嬉しそうに言葉を紡ぐ。 『あなたはとても純粋な人ね。ピアノが好きなのが伝わってくるわ』
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