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アツシは酒場で会う男の仕事を断ろうと思った。やばい仕事なのは分かっていたが、生きるために必要だったからやっていた。
だが今のアツシにはピアノを失う事だけは耐えられなかった。男の仕事のために教会に迷惑がかかることになったら、もう本当にピアノを弾けなくなる。
姿を消した今でも、アツシはリンのためにピアノを弾いていた。いつか彼女がこの教会に立ち寄り、自分の弾くピアノを耳にしてくれたら…。それだけがアツシの願いだった。
アツシは男に会うために酒場に向かった。男はアツシが仕事を断ると、そうかと笑った。
『お前には危険なことをさせていたからな。諦めるよ』
男はそう言うとアツシの肩をポンと叩いた。
『そう言えば…』
男が思い出したようにアツシの方に振り返った。
『お前リンって女を探していただろ』
アツシの顔つきが一瞬で変わる。
『いたのか?』
アツシがすごい剣幕で男に詰め寄ると男は慌てて手を振った。
『今いるかは知らないが、カジノのバーで歌を歌っていた女がリンって名前だったのを思い出したんだ』
『カジノのバー…』
アツシの様子を見ていた男は少し言いにくそうにしていたが、重い口を開いた。
『その女はカジノの常連客の愛人だったって噂だ』
『愛人?』
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